皮下組織掻爬法・削除法・吸引法
非直視下手術はその名の通り、目で確認せずに治療を行う手術法です。代表的なのが皮下組織○○法の3つです。
皮下組織掻爬法
皮下組織○○法の中で最も古いのが皮下組織掻爬法です。掻爬(そうは)は掻き出すという意味で、名前の通りアポクリン汗腺をスプーンのような器具(キューレット)で掻き出す手術法です。
メリット
この手術法のメリットは、傷跡が小さく済むことです。キューレットを入れる部分だけ切込みを入れるため、剪除法に比べると切開部分が小さくなります。
デメリット
この手術法の大きなデメリットは、回復までに時間がかかることや、たくさんの取り残しが起こってしまうことです。
普通、傷跡が小さければ回復も早いはずですが、掻爬法の場合、汗腺を掻き出したせいで皮膚がくっつきにくくなり、回復までに時間がかかってしまうんです。
また、目で確認せず手探りでかきだしていくため、汗腺の取り残しが多いだけでなく、皮膚がボコボコしてしまう危険性もありました。
そのため、現在ではほとんど行われることがありません。
皮下組織削除法
皮下組織削除法はイナバ式皮下組織削除法とも呼ばれ、キューレットにローラーが付いた器具を使います。ハサミの片方にキューレットがついていて、もう片方にローラーが付いており、脇の下の皮膚を挟んで汗腺を取り除いていきます。
メリット
- 汗腺を均一に取り除ける
- 傷跡が小さい
- エクリン汗腺も取り除ける
掻爬法の最大のデメリットは、皮膚の裏側がボコボコになってしまうことでした。削除法はローラーを使って滑らせるように汗腺を取り除いていくため、汗腺を均一に取り除けます。
そのため、取り残しも少なく、掻爬法に比べると傷の治りも早いです。
さらに、削除法ならエクリン汗腺を取り除くこともできます。皮膚が薄くなってしまうので失敗のリスクが有りましたが、ローラーで押さえつけながら器具を当てていくだけなので、皮膚が破れてしまう可能性も低く、多汗症にも効果が見られます。
掻爬法と同じく器具をいれる部分だけ切開するので、傷跡も小さいです。
デメリット
- 何箇所も切開する必要がある
- 皮膚の硬化や色素沈着が目立つ
- 回復までに時間が掛かる
器具を滑らせて取り除くので、何箇所も切込みを入れなければなりません。せっかく傷跡が小さく済んでも、何箇所も切るのであまり意味がないんですね。
また、エクリン汗腺を取り除けるのは大きなメリットですが、その分皮膚が薄くなってしまいます。破れる危険性は減ったものの、皮膚が薄くなることで色素沈着をおこし、赤黒いシミになってしまったり、皮膚が硬くなってカサブタのようになってしまうこともあります。
回復にも時間がかかります。掻爬法に比べると回復しやすくなったものの、固定には1週間程度かかりますし、数日間の入院が必要になります。
最近は日帰り手術も増えているので、大きな負担になることは間違いありません。
皮下組織吸引法
皮下組織吸引法は、カニューレと呼ばれる管を脇の下に通し、アポクリン汗腺とエクリン汗腺、皮脂腺をまとめて吸い取る手術法です。
脂肪吸引の技術をワキガ治療に応用したもので、他の2つとは比べ物にならないほど安定しています。掻爬法と削除法を行なっているクリニックは少ないですが、吸引法だけでは未だに多くのクリニックで使われています。
メリット
- 傷跡がほとんど残らない
- 手術時間が短い
- 脇毛を残せる
- ダウンタイムが短い
器具は細い管だけなので、脇を切開するのは数ミリ程度です。そのため、傷は目立たず、色素沈着の心配もほとんどありません。この手術法が開発されたおかげで、わきが手術はとても手軽なものになりました。
また、手術時間も短く、剪除法は1時間〜2時間ぐらいかかるのに対し、吸引法は30分〜1時間程度で終わります。ダウンタイムも短く、入院の必要もありません。
脇毛も残せますから、男性にとっては大きなメリットです。
デメリット
- 取り残しが起こりやすい
- 重度の人には効果が薄い
器具で吸い取るだけなので、取り残しが起こりやすいです。医師の腕や患者の状態によって手術の効果にばらつきがあるため、どれぐらい臭いが薄れるかというのは実際に手術してみないと分かりません。
他のふたつの手術法よりは効果が見込めるとはいえ、重度の人の場合は効果が薄くなってしまいます。
剪除法などの直視下手術なら、重度のワキガでも効果に差はあまりありません。しかし、吸引法の場合はやはり取り残しが目立ってしまい、手術したのに全く臭いが変わらないということもあります。
また、重度の人は再発の可能性もあります。アポクリン汗腺は根本までしっかり取らないと再発の危険性があるため、それをしっかり確認できないこの方法では、まだまだ不安は残ります。